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エリアマーケティング実施事例 ~デジタル×科学で最適な施策を打つために~

新店舗の出店など、非デジタルの世界でビジネスを行うにあたって欠かすことのできないマーケティング手法。それがエリアマーケティングです。

まだインターネット上での物の売買が行われていなかった頃、エリアマーケティングは店舗を開設する上で欠かせない手法でした。ネット上でのショッピングが当たり前となった今も、決してエリアマーケティングの考え方が不必要になったわけではありません。

今回は、マーケティング界隈でも特に歴史の長い「エリアマーケティング」について、デジタルの観点を交えて見ていきましょう。

目次

  1. 今、改めてエリアマーケティングが注目される理由

    1. エリアマーケティングのかつてと今

    2. 一貫性に重きを置いた「オムニチャネルマーケティング」

    3. オン・オフラインの境界線を無くす「O2Oマーケティング」

  2. エリアマーケティングを成功させる秘訣

  3. どのようなデータの収集が有効か?

  4. 3つのケーススタディから学ぶ 「エリアマーケティングの勘所」

    1. テナントのショップブログから顧客の需要を開拓した「パルコ」

    2. Beaconを活用した販促施策を展開した「京浜急行電鉄」

    3. リアル・デジタル双方のクリエイティブを多様化させる「カーセブン」

  5. 成功の鍵は「地域特性の把握」

今、改めてエリアマーケティングが注目される理由

インターネットが普及し、世の中の大多数の人がスマートフォンを持つようになった今、エリアマーケティングの価値が改めて見直されています。そこには、人々のライフスタイル・価値観の変化や、テクノロジーの発展が関係しています。


エリアマーケティングのかつてと今

かつて、エリアマーケティングといえば、国勢調査といった政府発信の統計データを元にした手法が王道でした。「この地域にはどんな世代の人々が住んでいて、どのくらいの所得を得ているのか?」「昼の人口はどのくらいで、夜になるとどの程度人口が変わるのか?」このようなデモグラフィックデータ(統計情報)を元に、人々の暮らしぶりや購買ニーズを探り、店舗の商圏と重ね合わせていくのです。

しかし近年、上記のような「デモグラフィックデータ」のみならず、デジタル上で取得されたライフスタイル・趣味を始めとする「サイコグラフィックデータ」を掛け合わせて、マーケティングに活用する動きが出てきています。その動きに関連した分野が、オムニチャネルマーケティングやO2Oマーケティングと呼ばれる領域です。

一貫性に重きを置いた「オムニチャネルマーケティング」

オムニ(omni)には「すべて」という意味があることから、オムニチャネルマーケティングとは「あらゆる経路を有機的に統合したマーケティング」を意味しています。似たような言葉に「マルチチャネルマーケティング」がありますが、複数経路を活用しながらも、そのコミュニケーションに一貫性を欠くことが多々課題に挙げられていました。(例:ECショップのメルマガと店舗のLINEアカウントで、全く関連しないアプローチを行ってしまうetc.)

そこで、オムニチャネルマーケティングでは「ユーザー(顧客)」を中心に考え、デスクトップからモバイル、オンラインからオフラインまで、常に関連性・一貫性のあるマーケティング施策を提供することに主眼が置かれています。

オン・オフラインの境界線を無くす「O2Oマーケティング」

オムニチャネルよりも狭義の概念として「O2Oマーケティング」があります。O2Oとは「Online to Offline」の略で、スマートフォンアプリやECサイトから実店舗へと誘導を図る手法を指します。例えば、スマホ上でのクーポン配布やキャンペーンの案内など、オフライン上での行動喚起を図る施策がこれに該当します。

かつてはオンライン上から実際の行動に結びつきづらかった領域も、スマートフォンの普及によってよりシームレスにオフラインへと誘導することが可能になってきています。

人々の購買行動が多様化し、リアルやデジタルといった領域の境界線が薄まっている今、顧客が求めているのは、新たな楽しみや発見を提供する買い物体験です。だからこそ、より精緻でリアルタイム性の高いエリアマーケティングの必要性が高まってきていると言えます。

エリアマーケティングを成功させる秘訣

では、エリアマーケティングで成功を収めるためには、どのような観点が必要なのでしょうか?実は、テクノロジーの発展が進み、マーケティングの精緻化が進む今も、その根底にある考え方は変わっていません。

1つは、その地域のターゲット層のニーズや関心をきちんと把握すること。もう1つは、仮説を元に行ったマーケティング施策の効果測定を行い、成功に繋がり得る要因を特定することです。

ターゲット層のニーズ把握というと、かつては店舗でのアンケート収集やサポートデスクでの問い合わせ分析が主流でしたが、顧客とのタッチポイントが多様化する現在、その手法や実施方法にも変化が見られます。また、仮説立案と検証のプロセスについても、同様のことが言えるでしょう。

どのようなデータの収集が有効か?

エリアマーケティングで成功を収めるためには、デジタル空間上でのマーケティングと同様に、「実態に即したデータをいかに効率的に集めるか」という点が課題になります。最も一般的な手法は、やはり店舗でのアンケートと言えます。例えば、中古車流通事業を手がけるカーセブンは、店舗に来店された顧客からのアンケートを紙ではなくタブレットで行うように変更し、その集計結果を折り込みチラシなどの販促施策に活用しています。

他にも、小売業を営むパルコは、自社アプリのPOCKET PARCOに顧客の位置情報を連携させており「周辺5km以内でアプリを閲覧した顧客に、販促アプローチを行う」といった施策を展開。アプリから収集したデータを元に地域特性を掴み、店舗での販促にも生かしています。

当該店舗の商圏に住んでいたり、働いていたりする顧客の特性や関心を掴む、という目的さえ果たせれば、リアルとデジタルでデータ収集の方法に大きな違いはありません。重要なポイントは、収集したデータをいかに効率的に、後のマーケティング施策に活かしていくか、という点に尽きるでしょう。

3つのケーススタディから学ぶ 「エリアマーケティングの勘所」

では、エリアマーケティングで成功を収めるためには、どのような勘所を押さえる必要があるのでしょうか?今回は3つの事例から、そのポイントに触れて行きます。

テナントのショップブログから顧客の需要を開拓した「パルコ」

1つ目の事例は、先ほども登場したパルコです。全国でファッションビルを運営している同社は、2013年からオムニチャネル戦略を本格化し、オムニチャネルマーケティングの先進事例を数多く創り上げてきました。そんなパルコのデジタルマーケティングの原点は、各店舗のショップブログを積極活用した点にありました。

ショップブログを始めた当初、パルコは自社サイト全体の運営管理を担う一方で、ブログの内容は各テナントに任せていました。そうしたところ、ブログを読んだ顧客から商品取り置きや取り寄せの依頼が増えてきたと言います。つまり、これまでは拾い上げることができていなかった「オンライン上で各店舗の取扱商品を確認したい」「商品の取り置きや購入をお願いしたい」という需要を顕在化することに成功したのです。各店舗の特性を生かした情報発信を行った結果、顧客ニーズを掴むことができた好事例と言えるでしょう。

この取り組みがきっかけとなり、2014年にはパーソナライズされた買い物体験を実現するために、スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」を開発します。このアプリでは、顧客の行動を「来店前/来店中/来店後」という3つのフェーズで管理。同時に、PARCO全店に整備されている館内Wi-Fiとの接続ログや天候データも取得・分析しており、地域ごとの購買データとの関係性を見出すことにも役立っています。商業施設というリアルのプラットフォームにおいて、データドリブンの施策を実践することで、デジタル時代のエリアマーケティングを体現しています。

Beaconを活用した販促施策を展開した「京浜急行電鉄」

2つ目の事例は、京浜急行電鉄が実践したBeaconに関する実証実験です。この取り組みは、京急線の7駅に計17個のビーコンを設置し、その近くを通過したユーザーにお得な沿線情報を配信するというもの。「ホットペッパーグルメ」と共同で行われたこの企画では、駅周辺の飲食店のクーポンをリアルタイムで配布するなど、販促施策の一環として行われました。

Beaconを活用したこのような取り組みは、京セラドーム大阪球場・富士急ハイランドといったエンターテイメント領域でも活用されており、今後も販促分野での利用拡大が予想されます。

リアル・デジタル双方のクリエイティブを多様化させる「カーセブン」

3つ目の事例は「カーセブン」です。全国で100店舗以上を展開する同店は、地域の顧客分析に応じて新聞広告の内容を変化させています。すなわち、セグメントごとにクリエイティブ内容を変化させているのです。この施策からも、デジタルやリアルといった領域を問わず、各顧客の関心に応じた販促施策の重要性が感じられるはずです。

成功の鍵は「地域特性の把握」

今回ご紹介してきたエリアマーケティングですが、全体に共通して言えることは「地域特性の把握が成功の鍵を握っている」ということです。地域特性とは、デモグラフィックデータ(統計情報)から明らかになる情報だけでなく、各地域における生活者の価値観の傾向(サイコグラフィックデータ)や行動特性・購買特性のことを意味します。

デモグラフィックデータの変化は、人々のライフステージの変化によってもたらされます。一方で、サイコグラフィックデータは社会トレンドや経済情勢、技術革新などによって短期間で不規則に変化する必要があります。だからこそ、新鮮なデータ(事実)に基づいた顧客ニーズの把握と、仮説に基づいたスピーディーな施策実行・検証が欠かせません。

エリアマーケティング自体、その地域の特性によって成功確率は変動しますが、そこで求められる観点はデジタルマーケティングとの共通点も多くといえます。各地域に応じた顧客特性を把握し、仮説立案と検証を重ねていくことが、成功への近道です。

スマートフォンが普及し、ネットショッピングが当たり前となった今、店舗での買い物体験を通して得られる価値が見直されています。そのような中、エリアマーケティングのフレームも徐々に形を変えていくことは間違いありません。店舗に関連したマーケティングの担当者はもちろん、デジタルマーケティングの担当者も、エリアマーケティングの全体像は日々意識し、マーケティング業務に取り組んでいきましょう。

マーケティングのサプリ編集部

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