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マーケターが押さえるべき3つの統計データ
インバウンド市場のトレンドを見極めるためには、何よりもまず統計データを確認し、適切に解釈する必要があります。マーケターが見るべきポイントとしては、主に次の点が挙げられるでしょう。
①訪日外国人数の増減
②一人当たりの消費額の増減
③商品サービスの購入満足度の変化
「①訪日外国人数の増減」を知るためには、日本政府観光局(JNTO)のWebサイトを見ることが確実でしょう。続いて、「②一人当たりの消費額の増減」「③商品サービスの購入満足度」については、観光庁の「旅行・観光消費動向調査」が信頼をおける、最新情報の実態把握も容易といえます。
では、これらの統計データからどのような点が読み取れるのでしょうか?
統計からわかる訪日外国人の「ある傾向」
母数は増えつつある訪日外国人数ですが、国別に見ると数値の増減が見られたり、消費傾向にも変化が見られたりします。押さえておきたい主なポイントは次の3つです。
①中国爆買いブームの終息
かつてインバウンド消費を牽引していた「中国爆買いブーム」ですが、ここ数年で勢いが衰えを見せています。この背景には、2016年頃に円高の傾向が見られたことや、中国政府が輸入関税引き上げたことがあるとされています。しかしながら、ブームの終息による消費額の減少分を上回る勢いで、インバウンド消費全体の金額は増え続けていることがわかっています。(みずほ総合研究所調べ)
②台湾・香港のリピーター割合が多い
観光庁の発表した平成29年訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人のリピーターは1,761万人で、全体の61.4%を占める。この割合は増加傾向にあり、6年間でおよそ4倍になっています。
そして、訪日外国人数を国別に見てみると、ある特徴が見えてきます。香港・台湾それぞれの国からの訪日外国人数に占めるリピーター割合が80%を超えている、という点です(香港は83%、台湾は80%がリピーター)。訪日回数が10回以上のいわゆる「ヘビーリピーター」を見てみると、香港は20%・台湾は15%となっており、中国のヘビーリピーター率(4%)と比べても、10%以上高い割合となっていることがわかります。
③訪日外国人旅行者1人当たり旅行支出は減少傾向
訪日外国人数は増加傾向にある一方で、旅行客1人当たりの支出は減少傾向にあります。旅行消費額を国別に見てみると、全体の約4割を占めているのは「中国」。しかし、電化製品などを大量に買い付ける「爆買い」は減少傾向にあります。その影響もあり、中国からの訪日外国人旅行者1人当たりの旅行支出も前年比0.5%減少しています。
近年の統計データやトレンドを通じて、昨今のインバウンド市場は「中国人をターゲットに据えればマーケティングは成功する!」というような単純なものではなくなっていることがわかります。統計データを読み解き、「どこの国から来日した人が、どのような消費行動を取っているのか」を精緻に調べる必要性が出てきているのです。
一見、難易度が上がっているように見えるインバウンド市場のマーケティング。しかし、これは決して特別なことではありません。インバウンド市場に関するマーケティングでも日本人に向けたマーケティングと同じように、より精緻かつ新鮮なデータに基づいた施策が求められているだけだと見ることもできるのです。
では、多様化が進む訪日外国人観光客の消費を捉えるために、いま私たちは何をすべきでしょうか?この市場を攻略するキーポイントの一つが「訪日外国人観光客の情報媒体」です。
訪日外国人はどこから情報を仕入れているのか?
大きな潮流として、リピーターの伸びが見られるインバウンド市場。では、彼らはどこから日本国内の情報を仕入れているのでしょうか?
1つは、インバウンド向けのメディア。どの観光地にどのような魅力があるのか、訪日客目線で解説されたコンテンツが人気を博しています。もう1つは、コミュニティ。既に日本を訪れたことがあるユーザーとのやり取りを通して、観光のプランニングを進めていくのです。
そして、これらのメディアやコミュニティには、訪日観光客が共通して見ているポイントがあります。
訪日観光客が興味を抱くポイント
文化やライフスタイルが異なる外国人観光客が日本に対して関心を持つポイントは様々。その中でも、より多くのユーザーが興味を抱くポイントがあります。
例えば、口コミなどの二次情報。一度現地を訪れた観光客が「どの程度観光を楽しむことができたのか」「どのような点を評価しているのか」など、口コミがもたらす影響力は計り知れません。
加えて、現地の言語を使いこなす編集部によって制作された「観光客目線のコンテンツ」。観光地を売り込む側のコンテンツは自画自賛になってしまいがちですが、日本人以外の目線で制作された編集タイアップコンテンツは、純広告とは異なる集客効果をもたらします。
このような情報を基点に制作されたコンテンツは、近頃需要が増え続けている「コト消費」との相性も抜群です。
インバウンド市場で魅力を放つ「コト消費」とは?
いま注目を集めている「コト消費」とは、商品という「モノ」を購入する形の消費ではなく、商品サービスから得られる「コト(体験)」を通じて価値ある時間を過ごす、という消費スタイルです。例えば、日本製品を求めていた観光客が、日本の食文化や買い物文化、または宿泊先での接客等に触れたことで「コト消費」を求めるようになった、という事例には枚挙にいとまがありません。
具体的には、次のような「7類型のコト消費」が存在します。
例① 着物レンタルなどの「純粋体験型」
日本独自の文化やスポーツなどを、実際に自分の身体で感じる形の消費スタイルです。実際の文化に肌で触れられるため、これまで最も長らく支持されてきた形態といえるでしょう。
例② 喫茶店などの「時間滞在型」
明確な目的があるというよりは、「その空間で過ごすこと」に意味を置いた消費スタイルです。カフェと雑貨、装飾品、書籍などの売り場を併設して、買い物体験を生み出しているケースもあります。
例③ 夏祭りなどの「イベント体験型」
地域独自の文化の他、宝くじのような懸賞を行うケースもあります。集客を行ったうえで、新たな消費を生み出す形です。
例④ 水族館などの「施設体験型」
テーマパークなどの施設を通じて、包括的な体験を提供する形です。美術館や映画館など、入場券が必要になる形態が一般的です。
例⑤ 特定の共通テーマを持った「コミュニティ型」
施設体験型とは別に、同じような関心を持った人たちと一緒に何らかの体験をする形です。スポーツ観戦やライブ参加などもここに分類されます。
例⑥ 東急ハンズなどの「ショッピング型」
他店では取り扱っていない珍しい商品や、専門性の高い商材を販売する手法です。その希少性や専門性の高さから、ワクワクする買い物体験を提供しています。
例⑦ 無印商品などの「ライフスタイル提案型」
InstagramやYouTubeの普及に伴い、近年増加しつつある類型です。地域文化や特定のブランドが提案する世界観やコンセプトに共感し、それらの商品を取り入れた生活を実践する形です。
企業によってはこれらの「コト消費がもたらす価値」を複数組み合わせるなどして、観光客に独自の価値を提供しようとしています。そして、これらのコト消費は高評価のレビューを通じて新たな需要を生み出し、新たな観光客を誘導してくる可能性を秘めているのです。
これらの需要を生み出すためには、SNSの活用も重要ですが、それには一定の時間もかかるでしょう。そこで、おおきなうねりを生み出すために必要な手法がメディアを活用したプロモーションです。では、具体的にどのようなメディアやプロモーションサービスが存在するのでしょうか?今回は5つをピックアップしてみました。
大きな影響力を持つプロモーションサービス5選
japan-guide.com
「japan-guide.com」は、月間のユニークユーザー数180万人以上を誇るポータルサイトです。訪問者のリピート率は6割といわれており、訪日外国人観光客のリピート率と重なる部分もおおいはずです。
また、95%以上が訪日意向を持ったユーザーであるため、訪日外国人観光客にリーチするには最適なメディアといえるでしょう。
japan-guide.comはこちらから
樂活的大方@旅行玩樂學
台湾から来訪する観光客に人気のブログといえば「樂活的大方@旅行玩樂學」。大きなサイズの写真が豊富で、旅の追体験ができるようなコンテンツが魅力です。まとめコンテンツのような編集軸も魅力の一つと言えるでしょう。
樂活的大方@旅行玩樂學はこちらから
樂吃購!日本(ラーチーゴー!日本)
日本・台湾の両拠点で約30名の編集部を抱え、台湾・香港の観光客の情報ニーズに応えている「樂吃購!日本」。
月間ユーザー数は111万人以上とされており、Facebookファン数も64万人を数えます。クーポンを好むが強い台湾・香港の訪日客のために、豊富なお買物券やレストランを用意しており、その点もメディアの一つの特徴となっています。
樂吃購!日本(ラーチーゴー!日本)はこちらから
FUN! JAPAN
「FUN! JAPAN」は、436万人の“日本好きコミュニティ”を活用したプロモーションサービスです。Facebookファン数430万人以上、FUN! JAPAN Webサイト会員数70万人以上を誇り、「日本好き」が集まるコミュニティとしては日本最大級。
30カテゴリ以上の会員プロファイルを元に、精度の高いプロモーションをかけることができます。また、訪日旅行が当たる“ビジット・ジャパン・キャンペーン“を各国で延べ10回以上実施するなど、オンライン上にとどまらない多彩な接点を設けることができる点が魅力です。
FUN! JAPANはこちらから
Compathy Magazine
台湾・香港のF1層からのアクセスが90%を占める、日本旅行に特化したWebマガジンです。運営開始から半年で約32万PVを記録し、お土産を始めとする旅全般のコンテンツを扱っています。
特徴的な点は、口コミなど二次情報が大きな効果を発揮している点。流行に敏感なF1層(20歳から34歳までの女性)にターゲットを据える上では最適なメディアといえるでしょう。
Compathy Magazineはこちらから
決め手は「旅行者目線の定義」
訪日客全般に向けたプロモーションに言えることですが、旅行者に影響力を与えるプロモーションには「旅行者目線のコンテンツであること」が必須条件です。しかし、この「旅行者目線」という点は、ターゲットになる旅人の国籍や属性によって異なります。
東京オリンピックが近づくにつれて、訪日客の割合や傾向にもまだまだ変化が生じるはずです。ターゲットに応じて効果的なアプローチができるように、自社の考える「旅行者目線」とマッチした最適なパートナーを見つけていきましょう。