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眠った技術を掘り起こせ!技術と広告を融合させ、生活者に「使ってもらえる」形に

株式会社博報堂アイ・スタジオ(以下 博報堂アイ・スタジオ)は、テクノロジーを広告ビジネス化する組織として「広告新商品開発室」を新設した。株式会社博報堂(以下 博報堂)の関連企業としてデジタル領域で実績を重ねてきた博報堂アイ・スタジオは、なぜ新たな組織を立ち上げるに至ったのか。
今回は、広告新商品開発室の沖本哲哉氏、須田和博氏、望月重太朗氏の3人に、その背景について伺った。

大半の技術が“眠っている”日本

 技術大国とも言われる日本には、革新的で先進的な技術を有する企業が多い。しかし、「新たな技術を開発したが、その使い道を見出せない」という企業も多く、開発された技術のほとんどが眠ったままの状態にある。須田氏によると、その理由は「技術を開発する思考と、生活者に喜ばれることを考える発想とがつながっていない」こと。
 つまり、技術を開発して満足するのではなく、「生み出した技術を生活者にどのように使ってもらうのか」という視点が必要なのだ。一方で、生み出した技術を生活者に使ってもらうための仕掛けを創造することは容易ではない。そこで、「技術を広告化しビジネス化する」組織として新設されたのが「広告新商品開発室」だと沖本氏は語る。

革新的な技術を、生活者にとって身近なものとするために

 「技術を広告ビジネス化する」とはどのような取り組みなのだろうか。沖本氏によると「ただそれだけでは生活者に使ってもらえずビジネスとしても成立しない技術をプラットフォーム化し、生活者の立場に立った広告の目線を加えることでビジネス化する」ことだそうだ。
 博報堂は、広告会社として長年、生活者に届く広告を追及し実績を積み重ねてきた。そして、博報堂アイ・スタジオは、インフラとテクノロジーをもとにデジタルプラットフォームを構築できるという強みを持つ。この2社がタッグを組んで誕生した広告新商品開発室なら、「技術と広告を組み合わせて、生活者に使ってもらえる新たな広告体験装置を生み出すことができる」と沖本氏は説明する。
 また、広告新商品開発室には多数のエンジニアが在籍し、R&Dにも注力しているとコミュニケーションディレクターの望月氏は付け加える。そのため、「アイデアをすぐに形にし、生活者に使ってもらえる広告新商品をワンストップで開発できる」というもうひとつの強みを持つ。
 広告新商品開発室では実際に技術と広告を組み合わせた新たな広告体験装置を世に送り出している。

『広告新商品開発室』のコンセプト

すでに多くの技術が、生活者に“使ってもらえる”カタチに

 広告新商品開発室を立ち上げるきっかけの一つとなったのが、博報堂のスダラボと共同で生み出した広告体験装置、トーカブル・ベジタブルだ。
 トーカブル・ベジタブルは、デジタルテクノロジーと生鮮売り場の融合に挑戦した「しゃべる野菜」の店頭プロモーションツールである。望月氏によると、「店頭の野菜売り場に買い物客が訪れて野菜を手に取ると、あたかも野菜自身が話しているかのように、その野菜のトレーサビリティに関する情報を音声で説明してくれる」ツールとのことだ。
 自分の手にした野菜に関する情報を音声で説明してくれれば、買い物客は農家とのつながりを感じながら安心して野菜を購入できる。そして、農家にとってはこれまでにない店頭プロモーションツールで販売することで、野菜の価値を向上させることができるだろう。また、店舗は野菜のトレーサビリティを楽しく買い物客に知ってもらえる仕組みを持つことができ、他の売り場への展開も可能となる。
 この「商品が自身のトレーサビリティや特徴を直接生活者に語りかける仕組み」は野菜に限ったプロモーションツールではない。今後、他の業種に応用展開する予定だ。
 さらに、長岡技術科学大学 工学部で雪氷学を研究する上村靖司教授と共同で、雪かき用IoTデバイスであるDig-Log(ディグログ)も開発した。Dig-Logは、雪かきスコップにアタッチメント式の感圧センサーを取り付けることでIoT化できる装置だ。
「日本で近年課題となっている、積雪量の多い地域での雪かきの担い手の高齢化や、担い手不足を解決したいと考えたこと」が開発の背景だと望月氏は語る。
 さらに望月氏は、実際にDig-Logを装着した雪かきスコップとスマートフォンを手に詳細を説明してくれた。Dig-Logは、スマートフォン向けアプリと連携して、除雪した雪の重さや消費カロリーを記録できるほか、他のユーザーと記録を競い合うことができる。つまり、ゲーミフィケーションの要素を取り入れることで、若者も楽しみながら雪かきできるような仕組みを作る装置だそうだ。
 確かに、このDig-Logならゲーム感覚で楽しみながら雪かきにいそしむことができそうだ。

Dig-Logを持つ望月氏と連携のアプリ画面

新たな技術を広告化し、ビジネス化する心強いパートナー

 広告新商品開発室では、今後もトーカブル・ベジタブルやDig-Logのような生活者に使ってもらえる広告体験装置を積極的に開発していくそうだ。
 また、R&D部門で新たな技術を開発するだけでなく、「生み出した技術をどうすれば生活者に使ってもらえる形にできるのか?ということに悩んでいるメーカー様にも、お気軽にご相談いただきたい」と沖本氏は言う。
 技術は、生活者への見せ方ひとつで新たなビジネスとなる可能性がある。長年、企業と生活者の橋渡し役を務めてきた博報堂アイ・スタジオと博報堂のノウハウを結集した広告新商品開発室は、技術を生活者に使ってもらえる形へと昇華しビジネス化してくれる心強いパートナーと言えるだろう。

Professional Profile

株式会社 博報堂アイ・スタジオ
取締役常務執行役員 / ビジネスプロデューサー
沖本 哲哉(おきもと てつや)

NTTを経て、2004年博報堂アイ・スタジオ入社。多種多様なクライアントに対し、マーケティング戦略からクリエイティブ戦略までをプロデュース。多くのマーケティングソリューションツールの開発を手掛け、2014年から現職。営業戦略立案、遂行に従事。

Professional Profile

株式会社 博報堂アイ・スタジオ
クリエイティブディレクター/ 部長
望月 重太朗(もちづき じゅうたろう)

武蔵野美術大学非常勤講師。広告におけるデジタル領域の企画/制作に従事。クリエイティブチーム「HACKist」での活動を通し既存の広告領域の枠を超えた可能性を日々探索している。アドフェスト、中国国際広告賞、広告電通賞、東京インタラクティブアワードなどで数々の受賞歴を持ち、2016年6月に開催されたライオンズ・イノベーションフェスティバルでは、現地スピーカーとして参加。

Professional Profile

株式会社 博報堂
シニアクリエイティブディレクター
須田 和博(すだ かずひろ)

アートディレクター、CMプラナーを経て、インタラクティブ領域へ。2014年3月自主開発型クリエイティブ・ラボ「スダラボ」発足。2014年スダラボ第1弾「ライスコード」が、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル、アドフェスト、アドスター、スパイクスなど世界の広告賞で合計60以上の賞を得る。ACC賞インタラクティブ部門2016審査委員長。今年4月から博報堂アイ・スタジオの「広告新商品開発室」に参画。