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これまで個人情報保護の観点から第三者が簡単に利用することはできなかった通信キャリアの位置情報データ。そんなデータをビジネスに活用できる画期的なサービスが「Cinarra(シナラ)」だ。今年、ソフトバンク株式会社が持つ匿名化されたのデータを活用してデータ分析とモバイルへ広告配信をスタートしたこのサービス、マーケティングにおける様々な課題を解決できる可能性を秘めている。
個人情報が漏れない仕組みを構築し位置情報の広告活用を実現
「これは単なる広告配信プラットフォームではありません。通信業界と広告業界という異なる市場をつなげる画期的なものです」と自社のサービスを説明するのは、シナラシステムズ創業者でCEOのAlex Zinin氏。
現在、デジタル広告の領域では、ユーザーの行動履歴を分析してターゲティング(標的とする顧客層を決めること)することが当たり前のように行われている。ただし、この行動履歴は「何をクリックしたか」や「どんなキーワードで検索したか」など、あくまでWeb上の行動を分析したもの。しかし、同社のプラットフォームでは、ターゲティングの際に通信キャリアが持つモバイルの位置情報が活用可能。つまり、消費者と共に移動するモバイルの位置情報を分析することによって「消費者のリアルライフ――実際の生活パターン」に基づいて、各ユーザーのモバイルに広告を配信できるのだ。なお、ここで注意したいのは「リアルライフ」といっても個人を特定するものではないということ。
「通信会社はユーザーの位置情報データを保有しています。しかし、これまでは、法制度やシステム上の要因から、十分に活用されていませんでした。そこで、我々はデータ匿名化と高度な分散コンピューティング技術を使って、『識別非特定情報(一人ひとりは識別されるが個人は特定されない情報)』であってもキャリアから外部に提供しない仕組みを構築しました。これにより位置情報が活用できるようになったのです」(Zinin氏)
通信キャリアの位置情報を活用して広告配信を行うプラットフォームである「Cinarra」は、まず日本で、ソフトバンク株式会社の匿名化されたデータを使ってサービスを2016年6月から開始している。現在は位置情報を活用したモバイルへの広告配信を行うDSP機能がサービスの中心だが、それはこのプラットフォームが実現できることの一部でしかないようだ。
「次のステージは他社のDSPでも(ターゲティングの機能を)使えるようにすることです。さらに分析機能を豊富にし、消費者をより深堀りする仕組みにします。もちろん個人情報は守ったままで――。最終的には、広告以外の様々なシーンでも活用できるようにしていく予定です」とZinin氏は語る。また、将来的には様々な通信キャリアと連携し、データを活用できるようにしていく考えで、実際に「国内外のキャリアと話を進めている」ということだ。そして「『Cinarra』は通信会社、広告主双方の市場を完全に変えてしまうインパクトを持っています。ですので、大小を問わず、いろいろな通信会社やWi-Fiを持つ企業、そして多様な業種の広告主側企業と積極的にパートナーシップを組んでいきたいと考えています」との方針を明らかにした。
現状の広告、マーケティングの様々な課題を解決する?
では、「Cinarra」でどのようなことが実現できるのか? 同社執行役員マーケティング部部長の高山靖弘氏に聞いた。
「まずは通信キャリアが所有する、ユーザーの性年代および位置情報を活用して、精度の高いターゲティング広告の配信が実現できます。例えば、特定のエリアにいる20-30代女性に対してリアルタイムでの配信や、過去の実際の行動パターンからセグメンテーション(顧客を特定の属性によって細分化すること)したグループに広告を配信するなど――。さらに分析機能によって、広告を配信した人の何割が実際に店舗に訪れたのかどうかということなどを明らかにできるのです」
なお、「Cinarra」のターゲティング精度について実証実験を行ったところ、たとえば主婦セグメントの的中率は、Web履歴を基にしたターゲティングを行うある著名なDSPの約2倍だというから、その精度の高さはご理解いただけるだろう。
さらに「Cinarra」で実現できることについて高山氏は「消費者をこれまでは不可能だった新しい軸でセグメンテーションできる」と強調。これについて、高山氏はダメージケア機能を持つ「シャンプー」を例に説明する。
髪のダメージの原因には、乾燥や塩分、塩素などがある。一口にダメージケアといっても、ユーザーからすれば原因によって知りたい情報やひきつけられるメッセージは異なるだろう。そこで「乾燥なら乾燥しやすい地域に住んでいる人、塩分なら海のそばに住んでいる人、塩素ならプールでエクササイズするためにスポーツクラブに通っている人というように、位置情報から髪のダメージのリスクが高いと想定される人を原因ごとにセグメンテーションするのです」(高山氏)。そうすれば、それぞれの原因に合うメッセージを個別に配信できる。つまりこれまで大衆向けと考えられてきた商材でも位置情報を活用すればターゲティングする価値が生まれるのだ。さらに今までマスメディアではリーチできなかった層へのアプローチも可能にするという。「例えば19~23時によく外出している人たちはゴールデンタイムにテレビを見ていません。そこで位置情報を使ってこのような人たちを抽出し、モバイルにテレビCMの動画を配信します。そうすればこれまでテレビでリーチできなかった層にリーチできる」(高山氏)
以上のように、これまでの広告やマーケティングの手法では取りこぼしていた潜在顧客の開拓につなげることが可能だ。そして、アイデア次第では、現在のマーケティングに関する様々な課題が解決できそうだ。業種や規模に関係なく「消費者のことを今よりも理解したい」と思っている企業なら、積極的に活用する価値があるソリューションだと言えるのではないだろうか?
Professional Profile
Cinarra Systems Japan 株式会社
CEO
Alex Zinin
ロシア出身。ロシアのカザン国立工科大学においてコンピュータ サイエンスの修士号を取得。
シナラ設立前は、Alcatel-Lucent 社において IP ソリューション部門のアジア太平洋地域担当バイス プレジデントに従事。インターネットテクノロジーでの業績からAlcatelフェロー、Bell Labsフェローとして表彰される。
その後、シスコシステムズのサービス プロバイダー ビジネス部門において、アジア太平洋地域および日本担当の最高技術責任者を経て、Cinarra Systems(以下シナラ) の 共同創設者 兼 最高経営責任者、さらにCinarra Systems Japan株式会社 代表取締役 に就任。
シナラにおいて全体のビジネス統括、商品設計、テクノロジー戦略、投資家や顧客との関係構築を担当。モバイルエコノミーの新しい商機を創出のため米国シリコンバレーを本拠地として、日本・シンガポール・ロシアを飛び回っている。
また、IP ルーティングおよびルーティング セキュリティに関連する数多くの特許を保有する発明者でもあり、インターネットとテレコミュニケーションに関するテクノロジーのエキスパートとして広く知られる。著書の『Cisco IP Routing: Packet Forwarding & Intra-domain Routing Protocols』は、IPルーティングのバイブルと評価されている。
また、インターネット技術の標準化を行う組織である Internet Engineering Task Force (インターネット技術タスクフォース、IETF) やその関連団体において積極的に貢献している。
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