競争の激しいビジネス環境で企業が成功するためには、消費者のニーズや行動を正確に把握することが不可欠になります。
そこで注目したいのが、「インサイト」です。
今回は、インサイトの概要や重要性、マーケティングでインサイトを活用するメリット、インサイトを見つける方法などについてご紹介していきます。
ぜひ、参考にして自社のマーケティングに活かしてください。
インサイトとは?マーケティングにどう活かせる?
「インサイト(insight)」は、日本語にすると「洞察力、直感、識見」などの意味があります。
マーケティング業界では、「消費者が自分でも気付いていない隠れた心理」のことを指します。
商品やサービスを求める消費者の中には、自分でも気付いていないような課題があったり、なぜその商品・サービスを求めているのか理解していなかったりする場合があります。
インサイトマーケティングでは、そんな消費者の隠れたニーズを見つけ出し、ニーズにアプローチした戦略を立てていくことが重要になります。
マーケティングにおけるインサイトとニーズの違い
マーケティングにおいて、インサイトとよく似た言葉に「ニーズ」があります。
どちらも消費者の行動と関連していますが、それぞれ異なる概念を表すものです。
「ニーズ」は、消費者が持つ欲求全般を指し、さまざまな形で現れます。
例えば、食事・保護・安全などの生理的なニーズ、社会的なつながり・自己実現などの心理的ニーズなどです。
さらにニーズは、顕在的ニーズと潜在的ニーズの二つに分類されます。
顕在的ニーズ
「顕在的ニーズ」は、消費者が自分自身で悩みや課題を認識しており、それを解決するための商品・サービスを求めている状態です。
この場合、どのようなものを求めているのかというのが明確になっているので、企業側もそれに合わせてマーケティングを展開していきます。
そのため、需要を把握しやすいというメリットがあります。
潜在的ニーズ
一方、「潜在的ニーズ」とは、潜在的な心理では求めているものの、表面化できていなかったり、認識できていなかったりする状態のことを指します。
本当はあるニーズに対して、消費者自身が具体的に言語化できていないことが多いため、企業側が需要を把握するのが難しい傾向があります。
しかし、潜在的ニーズに注目したマーケティングを展開できれば、競合他社との差別化が可能になります。
ニーズとインサイトを上手く活用することが大切
潜在的ニーズとインサイトは一見同じに見えますが、潜在ニーズは消費者が潜在的に抱えているものの存在に気付いている状態です。
それよりもさらに深く、本人でも気付いていない無意識的なものがインサイトです。
ニーズは、顧客に対する一般的なアプローチや商品開発の出発点として活用でき、インサイトは消費者の個別性に合わせたマーケティング戦略の立案に役立ちます。
ニーズとインサイトの両方を上手く活用することが、マーケティングの成功を可能にするでしょう。
マーケティングでインサイトが注目される理由
現代では、低価格で高品質な商品やサービスがたくさんあり、新たなモノが売れにくくなっていると言われています。
消費者がなぜその商品・サービスを選ぶのかというのは明確でない場合も多く、心理を深堀りして考えていく必要があります。
また、消費者が商品・サービスを認知してから購入に至るまでを表す消費行動も、近年複雑化してきているという背景も。
消費者の隠れた心理の理解が、効率的なマーケティング戦略の立案に繋がるのです。
マーケティングにおけるインサイトの重要性
インサイトという言葉の意味や、現在マーケティングで注目されている理由がわかったかと思います。
では、マーケティングにおいて、消費者の隠れた心理であるインサイトを理解する重要性はどこにあるのでしょうか。
ここからは、マーケティングにおけるインサイトの重要性について解説していきます。
消費者の行動を把握するため
マーケティングでは、消費者が商品・サービスを認知してから実際に購入するまでの行動や心理を理解することが大切になります。
消費者がどのような心理でどのような行動をとっているのか理解することで、それぞれの行動に適したマーケティング戦略が立案しやすくなるためです。
従来、マーケティングでは一方的な情報発信を行うプッシュ型販売が主流となっていました。
しかし、近年では消費者の視点に立ってよりパーソナライズされた提案をしていくことが重要になっているのです。
新たな需要を発見するため
マーケティングにインサイトを活用すると、新たな需要や市場を発見するのにも役立ちます。
消費者の隠れたニーズやトレンドが分かれば、それに基づいた新しいビジネスチャンスを見つけることにも繋がるでしょう。
インサイトに注目すれば、将来的に必要とされる商品・サービスの予測が立てやすくなります。
また、既存の商品・サービスの戦略の改善に役立つ可能性もあります。
競合他社と差別化できるから
マーケティングでインサイトを追求することは、競合他社との差別化を図る上でも重要な手段になります。
消費者の隠れた心理を理解して独自の価値を提供できれば、ブランドとしての個性を強めることができるでしょう。
独自性のあるマーケティングを展開していくためには、競合他社の後を追うのではなく、新たな需要を生み出していく必要があります。
競合他社が気付いていないようなインサイトを追求できれば、企業としての競争力を高めることも期待できます。
市場での認知度向上につながるから
ターゲット層となる消費者のインサイトを理解してマーケティング戦略を展開していくことで、市場における認知度の向上も期待できます。
インサイトをおさえてマーケティングを展開すると、商品・サービスに対して共感してもらえるだけでなく、購入後も口コミで紹介などの支援をしてもらえる可能性があります。
ターゲット層と属性の近い消費者が口コミを見ればその内容に共感してもらいやすく、さらなる好循環が生まれるのです。
効果的にターゲティングできるから
マーケティングにインサイトを活用する場合、消費者のことを理解する深い洞察力が求められます。
これにより、ターゲットとなる消費者の属性やニーズを正確に把握できるようになり、効果的なターゲティングが期待できるようになるのです。
ターゲット設定が正確にできていれば、適切なマーケティング戦略を展開できたり、適切な情報発信によって反応率が上がったりということが期待できるでしょう。
マーケティングでインサイトを追求するメリット
マーケティングにおいて、インサイトが重要であるということについて解説してきました。
では具体的に、マーケティングでインサイトを追求することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
マーケティングでインサイトを追求するメリットについて、ひとつずつご紹介していきます。
消費者のニーズや行動が理解できる
マーケティングにおいてインサイトを追求することは、消費者のニーズや行動の理解に繋がります。
これによって、より的確なマーケティング戦略やキャンペーンの展開が可能になるのです。
また、消費者の購買の動機や、どんな要素が購買意欲を高めるのかを把握できると、効果的なプロモーション活動やコミュニケーションがとれるようになるでしょう。
ターゲットの細分化がしやすい
インサイトは、ターゲット層のことを深く理解するために重要な情報源となります。
インサイトを追求することによって、ターゲットを分類ごとに分けて、細分化しやすくなります。
これによって、より詳細にそれぞれに適したアプローチができるようになるのです。
ターゲットの個別性に合わせたマーケティング戦略を展開できれば、共感を得やすくなり商品・サービスの購入にも繋がりやすくなるでしょう。
創造的なアイデアが生まれる
マーケティングにおいてインサイトに基づいた考察を行うことは、創造的なアイデアや新しい切り口が生まれるきっかけになり得ます。
消費者の心理や行動を深く理解できれば、市場におけるニーズやトレンドを把握し、新たなビジネスチャンスを見つけられる可能性があるのです。
インサイトに基づいた創造的なアイデアは、企業の成長や競争力の向上、シェアの拡大などにも繋がるでしょう。
インサイトによって商品・サービスだけでなく、販売や宣伝の方法でも新たなビジネスモデルが生まれる可能性があります。
マーケティング効果を最大化できる
インサイトの追求によって、マーケティング効果を最大化することができます。
消費者のニーズへの理解や対応を基に戦略を立案できるので、より効果的にマーケティングを展開できるようになるのです。
インサイトに基づいたターゲティング、パーソナライズされたコミュニケーション、魅力的なプロモーションなどで消費者の関心をひきつけ、ブランドの認知度や購買意欲が高められるでしょう。
市場の大きさを把握してリソースを最適化させることで、費用対効果の最大化にも繋がります。
企業や商品・サービスのファン化につながる
マーケティングでインサイトを追求すると、企業と顧客の関係性を深めることにも繋がります。
ニーズに合った価値を提供してくれる企業として消費者に認知してもらえれば、消費者が企業や商品・サービスのファンになる可能性があるのです。
消費者がファン化すると、リピート購入をしてくれたり、積極的に口コミを広めたりという行動が期待できます。
顧客満足度が高い状態を維持できていれば、さらに新規顧客が獲得しやすくなるという好循環が生まれるのです。
リスクの低減化
マーケティングでインサイトを追求することは、マーケティング活動や新商品開発でのリスクの低減にも繋がります。
インサイトを活用して消費者の意見やフィードバックを把握し、早い段階で市場の反応の予測を立てることができます。
これにより、失敗する可能性のあるマーケティング戦略を特定し、改善に繋げることができるのです。
早期で対応が出来ていれば、コストやリソースを節約し、市場での競争力を維持できるでしょう。
マーケティングでインサイトを追求する際の注意点
マーケティングで、インサイトを追求するさまざまなメリットについてご紹介してきました。
しかし、実際にマーケティングでインサイトを追求するとなると、注意すべきポイントがいくつかあります。
ここからは、マーケティングでインサイトを追求する際の注意点についてご紹介していきます。
リアルタイムなマーケティング活動を意識する
インサイトを追求したマーケティングでは、マーケティングで利用するデータの収集や分析、顧客との相互作用のモニタリングなどをリアルタイムで行うことが重要です。
近年は、SNSなどを活用したデジタルマーケティングの発展によって、よりリアルタイムな情報収集が可能になりました。
収集したデータを迅速かつ適切に活用することが、時代のトレンドやニーズに沿ったマーケティング活動に繋がります。SNSにおけるマーケティングは、下記の記事で詳しく説明しています。
再現性のある手法が確立されていないことを理解する
マーケティングでインサイトを活用する際の、具体的な手法が確立されていないという点に注意する必要があります。
インサイトは、それぞれの個別性に合わせてニーズを見つけていく過程が必要になるため、再現性のあるフレームワークがなく、需要の発見は難易度が高いです。
そのため、インサイトだけでなく、異なる角度からの視点も大切にして商品・サービスを開発する必要があるでしょう。
多角的に情報収集をする
インサイトを得るためには、単一の情報源だけに頼らず多角的に情報収集を行うことを意識しましょう。
データ収集には、消費者の行動データ、市場調査、消費者インタビュー、SNSのトレンドなどさまざまな手段があります。
これらの情報を組み合わせて、総合的な理解を深めることが重要です。
時間とリソースを適切に配分する
マーケティングでインサイトを追求するには、時間とリソースが必要となります。
情報収集、データ分析、洞察の抽出を行う際には、事前に時間とリソースが十分に確保できるか確認するようにしましょう。
また、必要以上に時間とリソースをかけすぎないよう、計画を立てて適切に配分を行うことが効果的なマーケティングに繋がります。
消費者の多様性に配慮する
マーケティングでインサイトを追求する際には、消費者の多様性にも留意する必要があります。
消費者は異なる背景や文化、価値観などを持っており、個別のニーズがあります。
そのため、一般化して考えるのではなく、多様な消費者の分類を考慮した上でさまざまな視点からインサイトを得ることが重要です。
持続的にインサイトを追求する
消費者のニーズや市場環境を反映したインサイトは、常に変化しています。
そのため、一度得たインサイトだけに頼るのではなく、持続的なインサイトの追求が必要となります。
トレンドのモニタリングや消費者からのフィードバックの収集などを通じて、最新の情報を把握するようにしましょう。
定期的にインサイトを追求することで、戦略の最新性や競争力の維持に繋がります。
チームで協力して専門知識を活用する
マーケティングでインサイトを追求するには、時間がかかったり、膨大な情報量が必要となったりします。
そのため、企業で効果的なマーケティング戦略を立案するためにインサイトを追求する場合は、単独ではなくチームで協力するのがいいでしょう。
チームでインサイトを追求することにより、メンバーそれぞれの専門知識や視点を活かせるようになります。
データの信頼性を確保する
インサイトを追求する際には情報収集が欠かせませんが、データの信頼性を確保することが重要です。
エビデンスが曖昧な情報は、誤ったマーケティング戦略に繋がるリスクがあります。
また、プライバシー保護、個人情報の適切な取り扱いなどに留意して、倫理性も確保できるようにしましょう。
訴求方法に注意する
インサイトを活用したマーケティングを行う際には、訴求方法にも配慮が必要です。
ターゲティングが適切に行えていないと、情報発信をしても自分に必要な情報と思ってもらえずかえって企業の印象が悪くなる可能性もあります。
また、誤解を招くようなメッセージや表現だったり、不安をあおるような訴求だったりするのは消費者からの信頼を失うリスクがあるので避けるようにしましょう。
企業内でインサイトの共有と活用を意識する
インサイトは、会社の中で共有されるべきです。
マーケティングチームだけでなく、関連部署や上級管理職との情報共有や意思決定プロセスにおいてインサイトを活用するようにしましょう。
インサイトを基にした戦略や施策を企業全体で理解し、共有することで、統一性のあるアプローチが可能となり、成果の最大化も期待できるようになります。
マーケティングに活用できるインサイトを見つける手順
さきほどマーケティングで、インサイトを効果的に活用するための手法が確立されていないことについて説明しました。
しかし、インサイトを見つけるためにはこの流れに沿っていけばいい、という手順はあります。
ここからは、マーケティングでインサイトを見つけるための具体的な手順についてご紹介していきます。
目標を設定する
マーケティングで活用できるインサイトを見つけるために、まずは目標を設定しましょう。
例えば、特定のターゲット層の行動やニーズを理解したい、競合他社との差別化できる部分を見つけたい、新たな市場を開拓したいなどがあります。
具体的に目標を設定すれば、インサイトを追求することでどうしていきたいかというのをチーム間でも共有しやすくなるでしょう。
データを収集する
インサイトを見つけるためには、消費者に関する情報を収集する必要があります。
市場調査、消費者インタビュー、アンケート調査、ウェブ分析、SNSのモニタリング、セミナーなどさまざまな角度から情報を収集するようにしましょう。
客観的な数値で表す定量的なデータでトレンドをおさえるほか、感情や心理などを表す定性的なデータで消費者の意見を取り入れることも重要です。
データを分析する
情報を収集したら、データを分析しパターンや傾向を把握します。
類似点や相違点、共通のニーズや欲求を見つけるために、データの整理と集約をしましょう。
このとき情報の信頼性や、有用性を評価することも重要になります。
情報量が膨大になる可能性があるので、必要時にはデータ分析ツールをダウンロードしたり専門のアナリストを起用したりするのがおすすめです。
インサイトを発見する
情報の分析を通じて、消費者の行動や心理の背景にあるインサイトを見つけましょう。
消費者の隠れた欲求やニーズだけでなく、行動パターンや信念、価値観なども明らかに出来るのが望ましいです。
ペルソナ設定や共感マップを活用すると、インサイトを発見しやすくなるでしょう。
また、データの中に驚きや矛盾点がある場合にも、インサイト発見に繋がることがあります。
インサイトの検証
発見したインサイトが実際に消費者に当てはまるか、妥当性を検証しましょう。
検証には、追加の調査やインタビュー、フィードバックの収集などを行うのが良いです。
また、チームメンバーや専門家と議論したり、情報共有したりするのも方法のひとつです。
ここで、妥当性がないと判断された場合には、改めて別のインサイトを探す必要があります。
インサイトを活用する
妥当性が検証されたインサイトは、マーケティング戦略実施や消費者とのコミュニケーションに活用します。
具体的には、ターゲティングの見直し、商品開発の方向性の決定、広告やプロモーションのメッセージの作成などに活かせるでしょう。
インサイトを基にしたマーケティング戦略を展開することで、消費者との関係を構築しやすくなり、企業の競争力強化につながります。
継続的にモニタリングする
マーケティングの効果を、継続的にモニタリングすることも大切です。
時代の流れやトレンドに合わせて、インサイトは常に変化します。
そのため、一度発見したインサイトを活用し続けるのではなく、新たなニーズや欲求が生まれていないか追求し続ける姿勢が大切になります。
定期的に市場調査やデータ分析などを行うようにして、マーケティング戦略の改善をしていきましょう。
まとめ:インサイトを活用してマーケティングで差別化を図ろう
マーケティングにおいて、インサイトは競合他社との差別化を図る大切な要素です。
消費者の自分でも気付いていないような心理に気付いて、そこにアプローチしていくマーケティング戦略を立案できれば、新たな商品や需要が生まれる可能性もあるのです。
常に新しい情報を収集してニーズやトレンドを把握し、インサイトを発見して、企業のマーケティングを成功へ導きましょう。
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