SaaSというIT用語が、一般的なビジネスの現場でも広く使われるようになってきました。名前はよく聞くけれど、具体的にどんなサービスのことなのか、実はわかっていない人もいるかもしれません。
テレワークの普及に伴い、今やビジネスで欠かせない存在となったSaaS。今回はサービスの概要と導入のメリット・デメリットを解説します。
類似のサービスであるPaaSやIaaSも併せて紹介するので、各サービスの特徴をしっかりと理解し、業務の効率化に役立てましょう。
Saasとは?
通常のパッケージタイプのソフトウェアは買い切り型で、購入したソフトウェアを各デバイスにインストールしてから使用します。対するSaaSは、インターネット環境さえあれば、いつでもどのデバイスからでも利用できます。例えばGmail、Googleドキュメントやスプレッドシート、Zoom、Chatwork、Slackなどは、すでにビジネスの現場に普及しているSaaSの代表例です。
SaaSは正式名称を「Software as a Service」といい、クラウド事業者がサービスとして提供するソフトウェアを意味します。多くの利用者に使いやすいように設計されているため、操作も比較的簡単です。テレワークなどの働き方の多様化に伴って、多くの企業が導入を進めています。
SaaSは、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のことです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/SaaS
PaaSやIaaSとの違い
SaaSと似たIT用語として、PaaSとIaaSの2つの単語が挙げられます。実はそれぞれの違いが理解できていないために、会話のなかで3つが混同されてしまう場面も。
SaaS・PaaS・IaaSはどれも同じクラウド型のサービスですが、提供するサービスの範囲に違いがあります。
広い範囲をカバーするサービスほど、利用する側にとっては手間がなく手軽ですが、カスタマイズできないため自由度は低くなります。反対に最小限のサービスであれば、導入後の手間はかかりますが、自社で自由にカスタマイズ可能です。PaaSとIaaSのそれぞれの対応範囲を確認しておきましょう。
PaaS
PaaSの正式名称は「Platform as a Service」。サービスとして提供されているプラットフォームです。PaaSのサービス範囲は、ちょうどSaaSとIaaSの中間にあたります。
完成されたソフトウェアはありませんが、ネットワークやサーバー、OSやミドルウェアといったプラットフォームまでカバーしています。
システムを構築させるための基盤となる部分は利用できるので、大幅に開発の手間を省きつつ、自社のスタイルに合わせてある程度自由に作り上げることが可能です。
IaaS
IaaSの正式名称は「Infrastructure as a Service」。サービスとして提供されるインフラを意味します。
IaaSで利用できるのは、サーバーやネットワークなどのインフラのみです。利用者がシステムの大部分を自身で構築し、運用管理する必要があるため多くの手間がかかります。その一方で、カスタマイズ性が高く、自社で使いやすいシステムを作れるメリットもあります。
SaaS導入のメリット
SaaSは操作も手軽で誰にでも使いやすいことから、多くのビジネスパーソンに支持されています。企業側にも多くのメリットがあることから、広く普及してきたと考えられます。SaaS導入のメリットは主に以下の3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
導入コストが安い
SaaSを利用すれば、自社でソフトウェアを開発する必要がなく、導入コストを大幅に下げられます。もし完全にクラウド型サービスに頼らず、ゼロベースでシステムを構築するとなると、ネットワークやサーバーなどのインフラから自社で用意しなくてはなりません。
同じクラウド型のサービスであっても、すでに説明したPaaSやIaaSであれば、程度の差はあれシステムは自社で完成させなくてはならず開発のコストがかかります。それらと比較しても、完成されたソフトウェアをそのまま使用できるSaaSは、非常に魅力的といえるのではないでしょうか。
導入がスピーディー
SaaSは導入までのスピードが早いのも、大きなメリットです。開発の手間がかからず、サービス上のアカウントさえ用意すれば、すぐに使用できます。また、買い切り型のソフトウェアと比較しても、ハードウェアやミドルウェアなどを用意してインストールする工程が無い分、手軽にスピーディーな導入が可能になるでしょう。
運用負担を減らせる
SaaSは導入時の手軽さに目がいきがちですが、実は運用の負担も大きく軽減できます。買い切り型のソフトウェアは、インストールした後のバージョンアップやメンテナンスはすべて自身で負担しなくてはなりません。一方、SaaSならクラウド業者がこれらの作業を担ってくれるので、ユーザーは常に最新バージョンでベストな状態のソフトウェアを使用できます。
企業においては、特にセキュリティレベルを高く保つ必要があります。社内で使用しているすべてのソフトウェアを管理し、バージョンアップやメンテナンス作業をすると相当な業務量になるでしょう。この負担が無くなれば、運用コストを大幅に削減できます。
サブスクリプション制のサービスが多い
SaaSは月額制のサブスクリプションサービスが一般的です。そのため、開発規模や人員の変動などに柔軟に対応できる利点があります。
不要になった場合は解約が容易で、これにより無駄なコストを削減できるのが大きなメリットです。年間一括支払いでコストを節約できるサービスも存在し、無料トライアルや月額利用を通じてサービスの品質を確認した後に、企業の状況に合わせて年間プランを選択することもできます。
多様な働き方が実現できる
SaaSの導入は、多様な働き方の実現につながるという点もメリットです。インターネット経由でどこからでもアクセスできるSaaSはテレワークとの親和性が高いため、自宅などの社外からでも勤怠管理システムを利用できます。
例えばSaaSの勤怠管理システムを導入すると、 自宅などの社外からでも打刻ができるようになります。さらに給与計算など他のシステムと簡単に連携できたり、働き方の多様化に応じて柔軟に機能やリソースを変更できたりする点も大きなメリットです。
SaaS導入のデメリット
業務を効率化して、ビジネスを快適にしてくれるSaaS。しかしSaaS導入にはまったくデメリットが無いわけではありません。導入に際して、あらかじめ理解しておくべきデメリットは以下の3つです。
- カスタマイズ性が低い
- 社内セキュリティの整備が必要
- 利用が制限される可能性
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カスタマイズ性が低い
SaaSはすでに完成されているシステムを利用するため、すぐに使えて手間がかからない反面、カスタマイズの余地が少ないために自由度は下がります。
自社の業務フローに合わせた仕様にしたいと思っても、ソフトウェアの機能を変えることはできません。クラウド業者は、SaaSに関してはパッケージで提供しているので、ユーザー側がソフトウェアの機能をいじることは想定していないのです。そのため、ソフトウェアの機能に合わせて社内の業務形態や運用方法の変更を余儀なくされる場合もあるでしょう。
自社に独自の業務形態があるなど、どうしても適したSaaSが見つからない場合は、PaaSやIaaSの導入も視野に入れる必要があります。
社内セキュリティの整備が必要
SaaSはインターネットに接続して利用するものだからこそ、導入に際しては再度社内のセキュリティを見直す必要があります。
企業においては通常、インターネット上のサービスに接続する場合、社内のセキュリティガイドラインに基づいて制限がかかる可能性があります。セキュリティ上の危険性があるWebサービスを避けるためですが、新しいSaaSを導入したときには接続できないトラブルも起こり得ます。
SaaSを積極的に導入していく前に、きちんと社内のセキュリティガイドラインを整備しておきましょう。手間はかかりますが、今後もクラウド型のサービスを利用する機会は増えることを考えると、早めに対策しておくに越したことはありません。
利用が制限される可能性
SaaSでは自社の都合に関係なく、メンテナンスやバージョンアップでサービスの利用ができなくなるのもデメリットです。
メンテナンスやバージョンアップを任せられるのは楽ですが、言い換えれば、それらの権限がサービスの提供者側にあるともいえます。自社の繁忙期であっても、お構いなしにサービス提供が中断されるケースもあるため注意が必要です。全社で同じSaaSを利用していれば、すべての部署が業務を中断しなくてはなりません。
さらに定期的なメンテナンス以外にも、サーバーの不具合で利用ができない可能性もあります。この場合も、インストールしたソフトウェアの不具合であればデバイスが1つ使えなくなるだけですが、SaaSは全社で影響を受けてしまいます。
SaaS導入するなら管理ツールの活用がおすすめ
SaaSの導入によって、社内のメンバー全員が場所や時間を問わずソフトウェアを利用・共有できるようになりました。大変便利である反面、それぞれの利用状況などをマネジメント側が把握しづらくなっている現状もあります。
そこで便利なのがSaaSの管理ツールです。管理ツールがあれば、自社のSaaSの利用状況からコストまでが一目で分かり、一元管理が可能です。ここではSaaS管理ツールのメリットや、選び方のポイントを解説します。
管理ツールの必要性
SaaSは気軽に使える性質上、社内で無秩序に増え続けるリスクがあります。部署内で連携が取れていなかったために、同じSaaSでアカウントが重複して作られるケースもあります。
これらのアカウントのうち、使用頻度が低いものは存在を忘れられ、放置される可能性が高いのです。また退職者のアカウントが、引き継がれずに放置されているケースもあるでしょう。
適切に管理されていないアカウントは、セキュリティやコンプライアンス上の大きなリスクになります。社内で管理の責任者を定めるべきですが、全社で増え続けるSaaSの膨大なアカウントを管理するのは至難の業です。そうなる前に専用ツールを導入して、しっかりとした管理体制を作り上げる必要があるでしょう。
管理ツールのメリット
管理ツールを導入するメリットとして、全社のSaaSに対する管理意識の向上が挙げられます。
インターネット環境があれば自宅のパソコンからでも簡単にアクセスできるので、SaaSはどうしても個々の社員のセキュリティ対策が甘くなりがちです。しかしSaaSであっても、情報漏洩のリスクがあることに変わりはありません。ツールを導入して厳格な管理体制を敷けば、社員の意識の変革につながるでしょう。
また全社で一元管理すれば、各部署で不要なSaaSも見えてくるかもしれません。多種多様なSaaSが生まれるなかで、サービスを整理し自社で本当に必要なものだけを選定することも大切です。結果的に運用コストが下がるのも大きなメリットといえます。
管理ツールの選び方
現在はSaaSの管理ツールもさまざまな商品があるので、導入前には比較して検討する必要があります。
特に操作のしやすさは重要で、導入したものの管理画面の構成が複雑なタイプはおすすめできません。どの社員も一目で運用状況がわかるものでなければ、社内にコストやセキュリティに関する意識が根づかないでしょう。また、当然のことながらツール自体のセキュリティも要チェックです。
管理ツールを選定する際は、実際に自社に導入したところをシミュレーションしてみましょう。社内で使用されているSaaSをすべてカバーできるか、どれだけ業務を効率化できるかを具体的に見ていくと、自社に必要なツールが見つかります。
まとめ
今回はSaaSの概要や導入のメリット・デメリット、併せて検討したい管理ツールについて解説しました。今後も働き方の多様化は進むと考えられていて、さまざまなSaaSやPaaS、IaaSがビジネスの現場にあふれてくるでしょう。
これらをどれだけうまく活用できるかで、各企業の業績も変わってくるかもしれません。まだ全社で本格的なSaaSの導入に踏み切れていない企業も、自社のスタイルに合いそうなサービスがあれば、積極的に取り入れてみましょう。
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