マーケティングに限らず、ビジネスの現場ではBtoBという言葉をよく耳にします。職場での会話によく出てくるけれど、実はちゃんと意味がわかっていない若手ビジネスパーソンも多いかもしれません。
今回はBtoBの意味や具体的な手法、よく似た用語であるBtoCとの違いをわかりやすく解説します。さらにBtoB、BtoC以外のビジネス形態もすべて紹介するので、この記事を読めば、今後はそれぞれの用語を正しく使い分けられるようになるでしょう。
■BtoBとBtoCの意味
まずは間違いやすい2つの用語、BtoBとBtoCのそれぞれの意味を解説します。民間企業のほとんどの事業はBtoBかBtoCの領域に属するので、この2つの違いを理解しておけば安心です。それぞれの領域の特徴も併せて解説します。
BtoB
BtoBとは、民間企業をターゲットとした商品やサービスを展開するビジネス業態のことです。Business to Businessを縮めた言葉で、企業と企業との取引を意味します。
企業は個人の顧客よりも資金力があるので、必然的に取引単価も高くなります。さらに一度顧客として取り込めば、その後も比較的安定して取引関係が維持できる傾向にあります。その一方で、商品・サービスの必要性を認識してから実際に購入するまでに、複数の決裁者の承認を必要とするなど、長期的なアプローチが必要になるのもBtoBの特徴です。
BtoC
BtoCは、個人をターゲットとした商品やサービスを展開するビジネス業態のことです。Business to Consumerを縮めた言葉で、企業と一般消費者との取引を意味します。
小売店や飲食店、個人向けのECサイトなどはすべてBtoC領域のサービスです。企業の顧客と違って1件あたりの単価は低く、常に多くの取引件数を維持していなくては十分な売上を出せません。さらに一般消費者は短期間で嗜好もニーズも変化するので、取引関係を維持することは容易なことではないでしょう。
しかし社内の稟議が必要なBtoBとは違い、本人の購買意欲次第ですぐに購入に至るのもBtoC領域の特徴です。そのため、BtoCでは接客や広告の見せ方などが大きく売上を左右します。
■BtoBとBtoCの3つの違い
BtoBとBtoCの言葉の意味が理解できたところで、次に2つのサービスの性質を詳しく見ていきましょう。BtoBとBtoCには、主に以下の3つの違いがあります。
- 意思決定者の違い
- 判断基準の違い
- 検討機関の違い
それぞれ詳しく解説します。
意思決定者の違い
まず、BtoBとBtoCでは、購入の意思決定に携わる人数が違います。BtoCでは意思決定に携わるのは1人。最終的な判断をするのも購入する本人です。しかし、BtoBでは商品・サービスを購入するまでに、多くの人が関わることになります。実際に商品・サービスを使用する複数の担当者が協議を重ね、さらに上司や経営陣などが最終的な判断を下すのが一般的です。
そのため、マーケティングや営業においても、それぞれの関係者にアプローチしていかなくてはならず、手順が煩雑になります。
判断基準の違い
BtoBとBtoCでは、購入の判断基準が大きく異なります。BtoCでは、判断に関わるのは購入する本人だけです。そのため、判断基準は本人が欲しいと思うかどうかがすべてになります。必ずしも実際に役に立つから欲しくなるわけではなく、ときには見栄や衝動といった、まったく合理的ではない心の動きに左右されて購入を決めることもあるでしょう。
一方のBtoBでは、個人の欲望や感情が入り込む隙はほとんどありません。自社の利益に貢献するかどうかが明確な判断基準になります。価格が他社のものと比較して適正か、導入後の効果がどのくらい見込めるかといったポイントを一つひとつ確認していく、合理的なプロセスを経て判断されるのです。
こうした違いから、BtoCとBtoBでは商品・サービスの宣伝の仕方も変わってきます。BtoCでは相手の欲望を刺激するように、BtoBでは業界のなかでの優位性などを具体的にアピールするのが効果的でしょう。
検討期間の違い
先に述べた2つの違いにより、BtoBとBtoCでは商品・サービスを認知してから実際に購入するまでの期間に大きな開きがあります。
購入者本人が自身の欲望のままに購買行動を起こすBtoCは、例えばECサイトであれば、商品画像を目にして衝動的に購入ボタンを押すこともしばしばです。ものの数分で購買までのアクションが完結してしまいます。
その一方で、BtoBは購入の判断に関わる人数が多く、購買までには他社の商品・サービスと性能や価格を比較する場合がほとんどです。最初のアプローチから売上が発生するまで、長くて数か月の検討期間を見込んでおきましょう。
■知っておきたい!その他のビジネス形態
BtoBとBtoCの違いについて詳しく見てきましたが、ビジネス形態は他にも存在します。ここではその他4つの形態を確認しておきましょう。
通常のビジネスシーンで使う場面は少ないかもしれませんが、上記の4つの用語も意味を理解しておいたほうがよいでしょう。それぞれ簡単に解説します。
BtoE
BtoEとは、企業が自社の従業員に対して商品・サービスを提供することです。Business to Employeeを縮めた言葉で、会社と従業員の間の取引を意味します。
BtoEは、実は多くのビジネスパーソンに馴染みがあるシステムです。社員食堂や、飲み物やお菓子を販売している会社の中の小売店は、すべてBtoE領域のサービスに該当します。また、メーカーであれば自社商品を社員価格で販売している企業も多いでしょう。
BtoEは、企業にとって売上を目的にした取引というよりも、福利厚生の一環に位置づけられるものです。
BtoG
BtoGとは、企業が官庁や市役所に対してサービスを提供することです。Business to Govemmentを縮めた言葉で、民間企業と行政の間の取引を意味します。
公共事業であっても、現場では民間企業が商品やサービスを提供して実施されます。また、市役所で使う事務用品も、民間のメーカーが作ったものです。企業によってはBtoGを自社収益の柱としているところもあるでしょう。
GtoC
GtoCとは、行政が市民に対して提供しているサービスのことです。Government to Consumerを縮めた言葉で、行政と一般消費者の間のやり取りを指します。
GtoCという用語は馴染がないかもしれませんが、誰もがこのサービスを日常的に享受しています。市役所で必要な書類を出してもらったり、税務署で税の手続きをしてもらったりといったことは、すべてGtoCに該当するのです。
これらのサービスを提供するための資金は、市民が払う税金が元となっているため、サービス自体は無償の場合も多いでしょう。BtoBやBtoCのように、利益を出すことが目的となっていないのが特徴です。
CtoC
CtoCとは、一般消費者同士で商品・サービスを売買をすることです。 Customer to Customerを縮めた言葉で、近年注目されている取引モデルを指します。
例えば、フリーマーケットをイメージすると、CtoCのビジネスモデルがわかりやすいかもしれません。また近年では、「シェアリングエコノミー」 と呼ばれる、ココナラなどのクラウドソーシングサイトを経由した個人スキルの売買も増加しています。このようなオンライン上でのCtoCサービスは、今後ますます盛り上がりを見せていくでしょう。
■BtoBマーケティングの代表的な手法5選
最後にBtoBマーケティングを実施するための、具体的な手法を紹介します。現在ではBtoBマーケティングもオンラインの施策が主流となっていて、より効率的なリード獲得が重視されています。代表的な手法は以下の5つです。
- Web広告
- コンテンツマーケティング
- ホワイトペーパー
- SNS運用
- メールマーケティング
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Web広告
費用はかかりますが、比較的早く効果が上がるのはWeb広告です。インターネットユーザーの平均的な視聴時間が大幅に増えた現在、インターネット上で広告を出せば、ターゲットの目に留まる可能性は高まります。
Web広告にはいくつもの種類がありますが、特にリスティング広告とディスプレイ広告が一般的な手法です。
リスティング広告は、GoogleやYahooの検索機能と連動していて、ユーザーが検索したキーワードに関連する広告が結果画面に上位表示される仕組みです。検索される頻度が多いキーワードほど広告料も高額になるので、どのキーワードを設定するか慎重な検討が必要です。
ディスプレイ広告はバナー広告ともいわれ、Webサイト上の広告枠に表示されます。枠の大きさにもよりますが、目を引く画像やコピーを盛り込んでターゲットにアピールできるので、商品・サービスの認知度をグッと高められるでしょう。
コンテンツマーケティング
特にBtoB領域のマーケティングにおいては、コンテンツマーケティングもおすすめです。検索エンジンや他社メディアの広告サービスを利用すると費用がかかりますが、自社で運営するオウンドメディアにユーザーを集められればコストを抑えられます。
そのためには、サイト内のコンテンツを充実させ、SEO対策を施して、検索結果画面でページを上位表示させる必要があります。質の良い記事を量産するのは大変ですが、外注を利用すれば手早くサイトを充実させられるでしょう。
またコンテンツマーケティングは、見込み顧客の育成にも効果を発揮します。自社の商品・サービスを認知したユーザーに対し、コンテンツを通して徐々に購買意欲を高められるのです。信頼ある情報を発信すれば、企業としてのブランディングにもつながるでしょう。
ホワイトペーパー
同じコンテンツ作成でも、ホワイトペーパーを配信するという方法もあります。ホワイトペーパーとは、PDFなどのファイルにまとめられたWeb資料のことです。ユーザーが興味・関心のある情報を無料で提供し、ダウンロードの際に企業情報などを入力してもらってリードとして獲得する仕組みです。
コンテンツマーケティングで自社サイトを育成するのには時間がかかりますが、ホワイトペーパーは1つ作成すれば、会員数の多い他社メディアなどで配信して、すぐにリード獲得の成果が得られます。もちろん自社サイトやメールマガジンでの配信も可能です。
ホワイトペーパーもコンテンツマーケティング同様、見込み顧客に知識を提供し、顧客育成や自社ブランディングにも利用できます。作成にはノウハウが必要ですが、Webマーケティングのコンサルティング会社などにアドバイスを受けてもよいでしょう。
SNS運用
拡散力があるSNSも、ぜひBtoBのマーケティングに活用したいツールです。SNSが提供する広告サービスもありますが、自社でアカウントを作って情報を発信する方法もあります。
SNS上では有益な情報、面白いコンテンツはすぐにユーザー同士でシェアされて拡散するので、費用をかけずに多くのユーザーに情報を届けられるチャンスがあります。
ただしSNSを活用するときには、自社がターゲットとする層がいるかを確認しておく必要があるでしょう。特にBtoB領域であれば、一般消費者のユーザーの間でどれだけ話題になっても売上にはつながりません。ビジネスパーソンが多く利用するサービスを見極めましょう。
メールマーケティング
メルマガに代表されるメールマーケティングは、昔からある効果的なマーケティング手法です。
特に休眠顧客の掘り起こしや、リードを獲得したものの購買意欲が低く商談に至らなかった見込み顧客の育成では、メールマーケティングが大きな効果を発揮します。継続的に新しい有益な情報を提供し続けることで、関係性の維持にも役立つでしょう。
メールマーケティングは、顧客の状況が変わってニーズが発生したタイミングを逃さないよう、自社の名前や商品・サービスを覚えてもらうことが狙いです。新しいキャンペーンの案内なども効果的ですが、押し売りの印象を与えないよう、あえてセールス色を抑えたニュースレターを送るのもよいでしょう。
■まとめ
BtoBについて、用語の意味やBtoCとの違い、具体的な手法などを解説しました。取引単価が高く、一度顧客を得れば比較的安定した売上が見込めるため、BtoBはいつの時代も人気のビジネス形態です。
その反面、新規顧客を得るまでに長い時間を要するのも特徴です。ユーザーが自分の気持ち一つで手軽に購入できるBtoCと違い、経営者の決裁が下りるまで粘り強いアプローチが必要となります。
BtoB領域では、新規顧客を得るために常に効果的なマーケティング戦略が重要です。コンテンツマーケティングなどは取り組んですぐに成果が出るものではないので、早めの対策を心がけましょう。
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